小説『昴』を読んだ

このパーティーでいただいた小説『昴』を読んだ。

この小説を読みながらいくつものシンクロニシティを感じた、「マカリイ」に関してはこちらに書いたが、ほかにも「太一」「諸葛孔明」「月震」などに僕は響いた。

「太一」については先日読んだ吉野裕子女史の本に登場する。「諸葛孔明」というのはひさしぶりにあるイベントの内覧会で大島京子さんに会ったら、諸葛孔明がしていたという占術に話しが及び、そのことをいろいろと教わっていたのだ。「月震」は月が中空になっていて、表面で大きな振動を与えると、鐘のように響き続けるという話しだ。これはかつてその研究をするためにNASAから機材発注を受けた会社の人から話を聞いた。

どの話も僕個人に起きたことで、すべての人に関係あるわけではないが、小説『昴』はそのようなゆるい関係性を信じる人のために書かれた小説だと思う。ハリウッド映画のように観ている者、読んでいる者を結末に追い込む作品ではなく、縁(えにし)の妙を楽しむことができる人に許される仕掛けが凝らされている。

たとえば小説『昴』には紅白二本のスリップ(しおりのための細い紐)がついている。小説に二本のスリップは珍しい。しかも紅白だ。なぜだろうと思いながら読んでいると、小説の中にそのヒントのような話しが登場する。しかし、その話しもこの本の装丁とどう関係あるのか、具体的には明かされない。ニュアンスの網の目に読者は誘(いざな)われる。

谷村氏は作詞をするのでニュアンスにとてもこだわるのだろう。一言一言はごくありふれた言葉だが、いくつかの要素に支えられてある言葉が登場すると、その言葉はもとの言葉以上の意味を持つ。なので読み始めたときには面白さがよくわからなかったが、読み進めるうちにいろんなことが見えてきた。

『昴』 谷村新司著 KKベストセラーズ

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