「将軍」がエミー賞18部門で受賞

「将軍」というネットドラマがエミー賞の18部門で受賞した。最多22部門、25ノミネートを果たしていたが、そのうちの18部門で受賞したそうだ。今わかっている範囲でいうと、ドラマ部門作品賞、ドラマ部門主演男優賞・真田広之、ドラマ部門主演女優賞・アンナ・サワイだそうだ。他の15部門も知りたい。

「将軍」は1975年に小説化され、1980年に日本語訳が完成した。同時に、NBCによってテレビドラマとしても放送された。リチャード・チェンバレン、三船敏郎、島田陽子、などが主演していた。そのドラマを短縮して、日本ではまずは映画として公開された。父が和訳本の監修をしていたので、一緒にその映画の試写会を見にいった。

当時は浪人生か大学生かくらいの年だったが、あまりいい印象はなかった。九時間のドラマシリーズを二時間程度にまとめたのだから、仕方なかったかもしれない。でも、日本人としての文化的違和感があったように覚えている。

今回の新しい「将軍」を全て見てみた。見事に日本人が感じるであろう違和感を訂正していたように思う。きっとその違和感をスタッフが総出でぬぐいさっていったのだろう。今回の「将軍」はそういう意味で見事だと感じた。

残念ながら1980年のドラマ版は見てないので正確にはいえないが、当時のアメリカ人が思う日本人でドラマが作られていたと思う。例えば愛の告白では、日本人ならああいう告白はしないなと思ったが、今回のドラマでは修正されていた。

素晴らしい作品に仕上げたスタッフの皆さんに拍手を贈りたい。しかも、それで欧米の人たちをも納得させるのだから、日本の文化的背景についてかなり理解してもらえるようになったと言えるだろう。

1980年はバブル真っ只中、表面的な日本人観が世界を覆っていたのが、いろんな人の努力できちんと理解されるようになって来たということか。

宮田選手は五輪に出場すべきか?

体操女子・パリ五輪代表の宮田笙子選手(19)が「喫煙と飲酒行為が発覚した」ため代表を辞退したという報道に、あまり興味は持てなかった。僕は宮田さんをまったく知らないし、体操に格別の思い入れもなかったから。

でも、このデイリー新潮の記事を読んで、違うなと思った。何が「違うな」と思ったかを書く。

そうそうたる有名人が「宮田笙子は五輪に出場すべき」とXに投稿してもネット世論は完全無視 謎を解くカギはビートきよしの投稿にあった

この記事の最後に、結論のようにこのように書かれている。

ネット世論は『政治家のほうが悪いから微罪の宮田選手を許そう』ではなく、『政治や飲酒運転など、馴れ合いだらけで全てをうやむやにする日本社会で、宮田選手の件だけは正義が実現した』と歓迎しているのです。ルールを破った人が正しく裁かれたと感じ、憂さを晴らしている状態だと言えるかもしれません」

デイリー新潮

確かにネット民の中にはうさを晴らすために「宮田選手の件だけは正義が実現した」と思う人もいたかもしれないけど、多くは違うのではないかと思う。

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ぐるり。

尾山直子さんの「ぐるり。」を、世田谷ものづくり学校に見に行った。

尾山さんは訪問看護師をしている。
そのかたわら、京都造形芸術大学美術科を卒業し、写真制作もしている。

訪問看護で同僚が担当した「えいすけさん」とその家族の写真を撮影していた。それを「ぐるり。」で披露している。

「ぐるり。」は去年の12月、世田谷美術館分館の清川泰次記念ギャラリーで展示されていた。そこに見に行きたかったのだが、体調を崩して入院し、見に行けなかった。
世田谷ものづくり学校での展示は、二度目の展示となる。2022年2月27日から3月6日まで開催されていた。
「ぐるり。」のホームページには数点の写真作品が掲載されているが、それを見ただけで僕は心を掴まれた。
https://gururi-2021.studio.site

ひとつ思い出した風景がある。僕が小学生の頃、近所の友達の家が農家で、大きな畑と庭を持っていた。よくそこで遊ばせてもらった。夏にはアリジゴクがアリを捕らえるのを見るのが好きだった。その庭を見渡す縁側の奥に大きな部屋があった。そこにある日から、おばあちゃんが寝るようになった。友達からは「もうすぐ死ぬのだ」と聞いた。以来、静かにしなければと、その庭では遊ばなくなった。友達を呼びに行くのもひっそりと静かに呼ぶようになった。一年くらいしておばあちゃんは亡くなった。もうその庭では、以前のようには遊ばなくなった。

「ぐるり。」は写真展で、写真の展示だけだと思っていたが、モデルとなった「えいすけさん」の言葉が、会場のまんなかに置かれていた。いまはもういない「えいすけさん」の言葉をひとつひとつ読んでいくと、いないはずの「えいすけさん」が、心の中に灯る。そのかすかな灯りが、僕の人生を彩ってくれたいろんな人たちと反射し合う。

「えいすけさん」の合掌が沁みた。

「えいすけさんとその家族」と、作家である尾山直子さんとの関係が、作品から匂い立つ。