ハラーイル・サルキシアン この写真は「クリエイティブ・コモンズ表示・非営利 – 改変禁止 2.1 日本」ライセンスでライセンスされています。
森アーツセンターギャラリーでおこなわれている『大英博物館 古代エジプト展』に行ってきた。本当は森美術館の『アラブ・エクスプレス展』に行ったのだけど、こちらの展示はどれもとても悲しくて滅入る作品が多かった。社会背景を反映してとても重苦しかった。ひとつひとつの作品を思い出すと胸のあたりがドヨよ〜ンとなる。
たとえばトップの写真。何の変哲もない街の写真に見えるけど、説明を読むと途端にドヨよ〜ンとする。これらはすべて公開処刑がおこなわれた場所の写真だそうだ。アラブの人たちにとって忘れられない風景で、それらを忘れるために処刑されたひとの写ってないさまを写真にしたのだとか。話聞いただけで胸に刺さるでしょう?
ほかにもこんな作品がありました。
アーデル・アービディーン この写真は「クリエイティブ・コモンズ表示・非営利 – 改変禁止 2.1 日本」ライセンスでライセンスされています。
「なにこれ?」としか思いませんでしたが、解説を読むとドヨよ〜ンとします。
この作品の作者であるアーデル・アービディーンがイラク戦争中にアメリカ国内を旅行すると、どこに行っても自分がイラク人であることを伝えると「I’m sorry」と言われたそうです。そのなんとも言い難い感情を表現するためにこの作品を作ったのだとか。脇には「I’m sorry」と印刷された飴があり、なめるとほろ苦いのでした。
この作品もすごい。戦争の写真をまるで観光地の絵はがきのようにしてある。会場には一枚だけ持って帰って下さいと書いてあるのだが、とってもこのドヨよ〜ン感に堪えられず、持って帰りませんでした。
ジョアナ・ハッジトマス&ハリール・ジョレイジュ この写真は「クリエイティブ・コモンズ表示・非営利 – 改変禁止 2.1 日本」ライセンスでライセンスされています。
こんな感じで展示物が続くので、もう自分の感情の持っていき場がなく、ドヨよ〜ン状態で森美術館を出ました。この現実について自分が何をできるのかを考え始めると、次から次へと思考が吹き出しつつ、しかもそれらへの具体的行動が見えず、頭の中をグルグルとドヨよ〜ン大魔王が駆け巡ります。ドヨよ〜ン大魔王の疾走を止めるには、どんな理由があろうとも戦力に頼って外交問題を解決しようとすることに反対するしかないなと思いますが、いかがでしょう?
さて、この駆け巡るドヨよ〜ン大魔王を頭にのっけて外に出ましたが、そのままドヨよンしていても楽しくないので、隣でやっていた森アーツセンターギャラリーの「大英博物館 古代エジプト展」に入ったのです。
42の罪の否定
こちらは過去の話なので極めて他人事でいられるので気が楽だった。入ったのは夜で、観客もほとんどいなくて、静かでいいけど、ちょっと怖いかも。でも気は楽。
こちらの展示には呪文の書かれた棺とか、お墓に持ち込んだお守りとか、いろんな興味深いものがあったけど、なんと言っても白眉は長さ37mのグリーンフィールドパピルス。ここにはひとが死んだらどこでどんなことをして、どうしたらあの世にめでたく迎えられるのかということが事細かに書いてある。もちろん字が読めないので詳しいことは解説書に頼るしかない。しかし、ところどころに登場する絵が面白かった。あと特に気になったのが42ヶ条の罪の否定告白。オシリスと42柱の神々の前で、「私は〜をしませんでした」と言って、すべてをクリアできたらあの世に行けるというもの。もしクリアできなかったら心臓を怪物アメミトに食べられてしまう。死んだあとにさらに殺されるという第2の死を、この時代のひとたちは恐れたという。さて否定していくその42の罪とはどんなものか、ここに書いておこう。
1.盗みをしなかったこと
2.悪事をしなかったこと
3.強奪しなかったこと
4.盗みをしなかったこと
5.捧げ物の穀物を盗まなかったこと
6.詐欺をしなかったこと
7.神々の財産を盗まなかったこと
8.嘘をつかなかったこと
9.反乱を煽動しなかったこと
10.誰も泣かせなかったこと
11.詐欺をしなかったこと
12.人をだまさなかったこと
13.誰も攻撃しなかったこと
14.神の牛畜を殺さなかったこと
15.悪口を言わなかったこと
16.誰にもつけいらなかったこと
17.耕された土地を荒らさなかったこと
18.誰にも詐欺行為をしなかったこと
19.誰の中傷もしなかったこと
20.理由なく怒らなかったこと
21.不貞をしなかったこと
22.自らを汚さなかったこと
23.誰も怖がらせなかったこと
24.誰も攻撃しなかったこと
25.災いになるような火をおこさなかったこと
26.決して自分の心臓を食べなかったこと(決して悲嘆に暮れなかったこと)
27.汚い言葉で罵らなかったこと
28.真実の言葉に耳を傾けないことはなかったこと
29.暴力をふるわなかったこと
30.慌てて裁くことはしなかったこと
31.誰も攻撃しなかったこと
32.会話中に言葉を増やさなかったこと
33.罪を犯さなかったこと
34.王を罵らなかったこと
35.水を汚さなかったこと
36.高慢に声を荒げなかったこと
37.神を罵らなかったこと
38.赤ちゃんの口からミルクを奪わなかったこと
39.召使いから食べ物を奪わなかったこと
40.聖なる死者の・・・を盗まなかったこと
41.神殿にある供物を略奪しなかったこと
42.真実を言う場で嘘をつかなかったこと
これら全部を胸を張って否定できる人なんて、少なかったでしょうね。それが証拠にパピルスには、どうやって神々の前で嘘をつけばいいのか、その方法を記した呪文までありました。
今日からNPO法人ピース・フィールド・ジャパンの「KIZUNAプロジェクト」が始まりました。イスラエルとパレスチナから青少年達を招待し、日本の学生達と交流を深め、「平和とは何か?」を学んで行きます。
地球に生きるすべての人が、42の罪の否定をできたら世の中少しはよくなるのでしょうか?