web上に公開されている52分のドキュメンタリー映画を見た。『SAVING 10,000 〜 Winning a war on suicide in Japan』監督のレネ・ダイグナンはアイルランド人。なぜこのようなドキュメンタリーを撮影したのか、その動機についても映画のなかで語られる。
日本の自殺率の高さをいろんな観点からインタビューして探っていく。自殺なんて自分とは関係ないと考え、どうやったら楽しく生きていけるかを考えているような人は特に見たいとは思わない映画かもしれない。とても暗い内容なので見ていると鬱々としてくる。
日本人はあまり暗いことを語りたがらないので、このような内容についてあまり話し合う場がない。職場では話す時間がないだろうし、帰りがけに飲む場所でこんな話をしたら嫌われそうだ。だから、無関心を決め込む。それが実は問題なのかもしれない。本当に困ったとき、相談すべき相手がいない。
日本は本当のことが言えない状況にどんどん追い込まれつつある。
「左翼のクソども」とtwitterに書いたという理由で水野靖久参事官が処分されるようだが、そう言いたくなる気もわからないではない。「復興のために頑張っている」というのは、立場によってすることが全く違うからだ。そのことの概要はここに書いた。水野参事官の書いていることを読むと、言えることと言えないことのギリギリのところを書いているように僕には思える。政府はなんとしても日本全体を守りたい。一方で、左翼と呼ばれた人たちは、恐らく個人を守ることを必死に訴えていたのではないかと思う。そうだとすれば、左翼と呼ばれた人たちの言いたいこともわかる気がする。本当は両者のあいだで丁寧な会話が必要なのだろうが、そんな時間はないことにされる。すでに福島の対応は遅いと言われて大変なのだ。その板挟みに遭ってしまう官僚達は仕方なく言葉が荒れてしまうのだろう。
もし水野参事官のことを問題だというのなら、安倍首相もほぼ同罪にされなければ割に合わないだろう。
安倍晋三首相が6月9日夜、自身のFacebookページに「聴衆の中に左翼の人達が入って来ていて、マイクと太鼓で憎しみ込めて(笑)がなって一生懸命演説妨害してましたが」などと街頭演説の報告を投稿したが、10日朝になってこの投稿は閲覧できない状態になった。ただ、公式Twitterには投稿が残っていたが、10日正午ごろに削除された。IT Mediaニュースから引用。http://www.itmedia.co.jp/news/articles/1306/10/news052.html
選挙前は「TPPは慎重に…」とか言っていたが、選挙が終わると何が慎重なのかよくわからない勢いで参加へと突っ込んでいった。安倍首相に「左翼」と呼ばれた人たちがTPPのことを批難していたのだとしたら、ひどい言われかただ。こうやって言って良いことと悪いことが立場によってあることが暗黙のうちに了解されていくことが不気味だ。だいたいこのニュースはネット上ではもうIT Mediaニュースでしか読めない。まるで現在は戦争前の言論統制時かと思ってしまう。
心の内部被曝がどんどん進行する。それが自殺者を生む理由のひとつだと僕は思うけど、違うのかな?
本当の愛は真実を語ること。真実が複雑なら、時間をかけて丁寧に話さなければならない。レッテルを貼るだけでコミュニケーションをしていると、そのツケはいつか回ってくる。
自殺者1万人を救う方法も、ひとりひとりが目の前の人ときちんと会話するしかないのだろう。効率ばかり追いかけてきた僕等には、少し難しい課題かもしれない。