特定秘密保護法案について僕が思うこと

特定秘密保護法案が2013年12月6日に成立し、同年同月13日に公布された。1年以内に施行されるはずだ。僕はこの法案について賛成か反対かとても微妙だ。この法案をどのように利用するかが大切だから。もし、日本人がみんな互いに信頼し合える間柄ならば、たいして問題にはならない。信頼し合えない間柄なら大変問題だと言うことだ。さて、どちらの立場に立つのか? このことに関して考えるために、少し別のことを考えてから、この問題に戻ってこようと思う。

20年近く前、僕はケニアに行った。一頭の象に会うために。その象の名前はエレナ。ドキュメンタリー映画『地球交響曲(ガイヤシンフォニー)第一番』に登場する象だ。僕はこの象を育てたシェルドリック動物孤児院を舞台として、『ひとりぼっちのケティ』という少女マンガの原作を作った。ストーリーの概要は、動物孤児院の存在を知った日本の女の子キッコが、子象の養い親となり、その子象ケティに会いに行く。そこで密猟の現実に巻き込まれながら、動物を愛するとはどういうことかを学んでいく。このとき、現地の象の密猟について詳しく調べた。そこで僕自身がとても大切なことを学ぶことになった。それは歴史というものの成り立ちだ。

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アイ・ウェイウェイは謝らない

映画『アイ・ウェイウェイは謝らない』を見て来た。

アイ・ウェイウェイは中国人にもかかわらず、中国を相手にアートを通して社会批判を続けているアーティスト。その様をノンフィクションのカメラが追っていく。

一匹の天才ネコの話で始まる。その比喩が素敵だった。そのあとに彼の話が続くのだが、中国との戦いはとても不利。個人vs国で勝てるわけがない。しかし、彼なりの工夫とユーモアでいろんなハードルを越えていく。その様が微笑ましかったり、もどかしかったり。

アイ・ウェイウェイは自分では作品を作らない。すべてコンセプトやデザインを決めるだけで、あとは職人が作品を作る。職人の言葉が印象的だった。

『僕たちは殺し屋さ。ウェイウェイがやれということをやる。理由なんて知らなくていい』

映画の後半、政府からの許可をもらって作ったアトリエを、完成してすぐに壊せと、許可したはずの政府から指示される。まるで囚人に砂山を移動しろと指示したあとで、その砂山も元に戻せという苦役のような指示が来る。それをアイ・ウェイウェイは利用する。そのことをツイッターでつぶやき、そこをパーティー会場として楽しんでしまう。集まった人びとはなくなることがわかっているアトリエで思い思いに楽しんでいく。集まった人たちの思い出が国によって破壊されていく。そのこと自体がアートと抗議になってしまう。

日本も特定秘密保護法が通り、アイ・ウェイウェイのようなアーティストが必要になるかもしれない。ぬるま湯に浸っているうちに日本人は自由も感覚も剥奪されて、ただ生きている家畜のような存在になってしまうのか。

ここから先はラストシーンについて。これから映画を見る人は見ないほうがいいかも。

映画『アイ・ウェイウェイは謝らない』ホームページ

以下の映像はそのエピソードが映画にも登場する『ラオマァティホア』

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化学物質のビッグバン

昔から様々な化学物質が生み出されてきた。その速度は年々上がっている。多くの分野での技術向上のために化学物質を合成する手段が増えてきているからだ。これらの化学物質がどのような作用を及ぼすのか、たいていのものはきちんと調べられていると思うだろう。ところが違う。

たとえば環境ホルモン。この言葉をあなたは覚えているだろうか? いまでは内分泌攪乱物質という名前になっている。現在では起きている現象と化学物質のあいだに有意の関係が見出されないとしてほぼ無視されている。

毒性実験はどんどんスピードアップさせられている。効果のある薬物がなかなか輸入できないのは毒性実験に時間がかかりすぎるからだと言われる。しかし、毒性実験には時間がかかるものだ。なぜなら催奇形性実験は数世代にわたって実験されなければならない。もし時間をかけた実験ができずに、数世代先に催奇形性が現れる物質を取り込んでしまったら大変なことになる。しかし、そのような実験は軽視される傾向にある。

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