なぜアメリカ人はイルカや鯨が大切なのか

The Cove」がついに日本でも一般上映されることになりそうです。

そうなると今度は日本人の認識とアメリカ人の認識のギャップにきっと驚く人たちが現れるでしょう。なぜアメリカ人はあんなにイルカや鯨が大切で、一方日本人はなぜ鯨を食べたがるのか、それが根っこの部分から理解できないと会話ができないですからね。

The Cove」を見ても、アメリカ人の根っこはわかりません。人によってはあまりにもきつい意見の押しつけで見ていられないと劇場を出ていく人もいるでしょう。実際に知り合いに我慢ならぬと出てしまった人がいます。

イルカや鯨がいつから大切にされているのかを調べると、アメリカ人の心情が少し理解できます。

わんぱくフリッパーがアメリカで放映されたのは1964年。それが日本で放送されたのは1966年からでした。この番組でイルカの人気が一気に高まり、水族館でもイルカショーを取り入れるところが増えたと言います。一方で60年代後半からヒッピームーブメントが盛り上がってきます。ヒッピームーブメントとは、ベトナム戦争の意義を疑問視する人たちが反対運動を起こし、愛と平和を訴え、自然への回帰などを唱えた運動で、様々な文化・芸術・思想を生み出していきました。アメリカ人の多くはこの運動に非常に大きく影響されています。

だから、1968年にアポロ8号が月の周回に成功し、地球の写真を撮影した際には、その写真がヒッピームーブメントの大きなシンボルとなりました。つまり「どんなに人が対立していても地球はひとつ」ということが、その写真を見ることでぐっと心に迫ったのです。

ほぼ時を同じくしてロジャー・ペインは鯨の唄を録音、研究し、その唄が鯨の間にどのように浸透していくのかを発表しました。その唄は海域毎に流行があり、つまりは世界中の海で歌われている唄がつながりを持っていることが示されました。そのことが海のワンネスを象徴することになったのです。

ジョン・C・リリーはイルカの脳や言語の研究について発表しました。この研究は1955年から始められ、終了したのは1968年でした。それ以降、リリー博士は少しずつその研究成果を発表していきます。そのことでいかにイルカが知性的であるかを示していきました。

1973年に発表された映画『イルカの日』では、リリー博士をモデルとして、イルカの研究をしている博士に育てられたイルカが軍に利用され、兵器にされてしまう物語が作られました。後年アメリカ海軍は実際にイルカを兵器として育て、現実の話となります。

これらの研究や映画がバックボーンとなり、イルカや鯨はアメリカ人にとって平和の象徴であり、地球がひとつであることの象徴となりました。だからこそ、過剰にそれを守ろうとするのです。それは自分たちの平和を守り、人類の統一を夢見ることの象徴であるからです。最近では地球環境保護の象徴としての意味が重くなってきています。

一方で日本人にとってのイルカや鯨はどのようなものでしょうか。

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The Coveの自主上映会 2/11代々木にて

ドキュメンタリー映画「The Cove」のDVDが手に入ったので、友人知人10名ほどで一緒に見ました。

見終わったあとでそれぞれの感想や意見を交換し合ったのですが、それがとても楽しかった。いろんな思いが噴出します。ある人は「動物を人間が簡単に殺してしまうことが問題だ」といい、ある人は「ここで言われている水銀とは、どんな水銀かはっきりしないのでもっと詳しく説明しなければ駄目だ」といい、ある人は「意見が偏りすぎている」といい、そしてある人は「殺されたイルカが最後に尻尾を振っているのが痛ましかった」と言いました。そして、全員一致したのは「もっとたくさんの日本人がこの映画を見て、その上で言いたいことをいい、変えるべきところを変えればいい」ということでした。

この映画を見れば、主人公であるリチャード・オバリーがどんな悲しみを抱えているのかがよくわかります。彼に共感する人はきっとイルカ殺しをやめようと声を上げ始めるでしょう。それが怖くて漁業関係者はこの映画を日本で上映させたくないのかもしれません。

仕立てはイルカ殺しをやめさせようとする映画ですが、深いところに横たわる問題はコミュニケーションの断絶です。

太地町の漁民たちは明らかに被害者です。一方で加害者でもある。リチャード・オバリーやこの映画の制作者も被害者であり、加害者です。互いに被害者であることばかりを訴えても話は先に進みません。同様に日本人も被害者であり、加害者です。この問題を無視し続ける限りそれは変わりません。この映画は日本以外ではかなりの注目を浴びています。それがなぜなのか、いまの日本人には理解できません。なにしろその作品すら見られないのですから。2010年1月30日現在で44もの映画賞を受賞しています。そして、オスカーの候補作としても残っています。

The Cove公式ページ

この映画が日本で見られないのは、他の国とのコミュニケーションの断絶を深くするだけです。見たあとで他の国の人たちといろんなことを言い合えば良いのです。それができないことが大きな問題です。この映画は見た人がみんな何か言いたくなるような面白さがあります。つまらないから上映されないのではないでしょう。

イルカ保護の団体がこの映画の無料自主上映会をします。その際にパネルディスカッションがあり、パネラーとして呼んでもらいました。僕は必ずしもイルカ保護を訴える者ではないので、どんな話になるか楽しみです。

イルカから地球環境を考える「海・イルカ・人」Vol.3
2010年度 アカデミー賞 長編ドキュメンタリー部門 ノミネート作品
「THE COVE」(ザ・コーヴ )上映 & トークセッション
         
日 時: 2010年2月11日 (木・祝日)
時 間: 14:30〜21:30(4部構成)
    * 部分参加可。詳細は下記をご参照ください。
参加費:無 料(但し事前予約が必要です)
会 場: 国立オリンピック記念青少年総合センター「センター棟 101号室」
    〒151-0052 東京都渋谷区代々木神園町3-1
アクセス:小田急線 参宮橋下車 徒歩7分、
(駅にアクセス案内有り)/ 地下鉄千代田線 代々木公園駅(C02)下車、
(代々木公園方面4番出口)徒歩約10分 / 京王バス 新宿駅西口(16番)、
渋谷駅西口(14番)より代々木5丁目下車 すぐ。地下駐車場有ります。
詳細サイト⇒ http://nyc.niye.go.jp/facilities/d7.html
会場内での食事は禁止です(飲み物OK)/
2階にカフェ、近隣の棟にレストラン、売店が有ります
主 催: エルザ自然保護の会
    〒305-8691 茨城県つくば市筑波学園郵便局私書箱2号
     http://www.elsaenc.net/index.htm
協 力: オフィスタラーク、DRUMAGIK、パンゲアシード、サークリット
ご予約方法: 「サークリット」まで、メール、お電話、FAXでご予約下さい。
E-mail circlet@gem.hi-ho.ne.jp
TEL 0422-22-0311 FAX 0422-22-0312
※ なるべくメールでお願いします。
ご予約の際は、1.お名前、 2.Eメールアドレス、3.お電話番号、4.4部のうちの
どの部に参加ご希望かをお知らせ下さい。
ご希望の部を自由に 組み合わせて、あるいは、一部のみのご参加も大歓迎です。
E-mailでご予約の際は、件名を「2月11日イベント参加希望」とご記入下さい。

◆映画とイベントの内容◆
<第1部・第4部>海外各国で大きな話題となっている
日本のイルカ猟を題材にしたドキュメンタリー映画「THE COVE」を
上映します。
今回、この映画の監督であり、OPS代表のルイ・サフォイアス氏と、
映画の中心人物であると同時に、イルカの保護・救済活動を世界的に続けている
SJD代表のリチャード・オバリー氏の希望によって、
この映画が資料映像として上映されることになりました。
イルカが好きな人、環境汚染や食の安全について考えている人はもちろんのこと、
あらゆる世代の人々に観ていただきたい作品です。
<第2部>重金属問題のスペシャリストで
財団法人政治経済研究所環境問題研究室主任研究員の小野塚春吉先生の講演と
質疑応答。演題は「高次捕食性海生生物における環境汚染物質の
濃度レベル—健康影響の視点からの考察」
<第3部>小野塚春吉先生、ライターとして活躍されている
オフィスタラーク主宰のつなぶちようじ氏、
及び作家でエルザ自然保護の会事務局の辺見 栄が加わり、
水銀問題をはじめ、イルカ猟から水族館の話題まで、
多岐にわたってお話します。
司会進行はイルカの取材を長年続けている映像作家の坂野正人が担当します。
どなたでも気楽にご参加頂き、みなさんの意見交換の場になれば…と思います。
まず、真実を知ることからはじめてみませんか?

◆プログラム◆ *時間は多少遅れる場合がございます。ご了承ください。
14:10〜 受付開始 *受付でお名前をご確認してからお入りください。
自由席となっております。
第1部 14:30〜16:00  「 THE COVE 」 1回目上映
第2部 16:20〜17:10  小野塚春吉先生のお話とQ&A
    テーマ「水銀汚染と健康への影響およびその対策」   
第3部 17:30〜19:30  パネルディスカッション
    メインテーマ「イルカから地球環境を考えよう」
第4部 20:00〜21:30 「 THE COVE 」2回目上映
     *お話の会に参加できない方のご参加も大歓迎です。

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The Coveがオスカーの前哨戦で勝つ

こちらで何度か取り上げてきた「The Cove」ですが、オスカーの前哨戦と言われている「ブロードキャスト映画批評家協会賞」のドキュメンタリー部門でベストドキュメンタリーに選ばれました。

この作品に対するアメリカと日本の温度差がよくわかります。日本が舞台なのだし、見てみたいと思いませんか?

この映画の概要はリチャード・オバリーというイルカ解放運動家が太地町でおこなわれているというイルカ漁を、このドキュメンタリー映画の監督と共同して映像に捉えるまでの物語です。イルカを殺すシーンは、確かに海が真っ赤となり残酷ですが、それはたいした問題ではないと思いました。牛でも豚でも屠殺のシーンは残酷なものでしょう。それより問題は、獲ったイルカをどのように処理しているかがわからないという点です。この映画によればイルカの肉は「クジラ肉」と表記されて売られているとのこと。つまり、私たちはクジラの肉だと思って食べている肉のいくらかが、実はイルカの肉であることをDNA検査で突き止めたというのです。

そのイルカの肉は明らかに水銀濃度が基準値を上回っていることが知られています。水銀を大量に摂取すれば水俣病となります。そのようなことをこの映画では伝えているのですが、この問題は日本国内の問題です。それをどうして日本では上映しないのでしょう?

地方のイルカ食の文化を守るのは賛成ですが、もし本当に水銀濃度が高いのであれば、そのことを多くの人に知らせるべきではないでしょうか? もしそのことが嘘であるなら、そのことを証明するべきではないでしょうか?

この映画は日本に対する反捕鯨運動と思われています。しかし、オバリーの活動は日本だけに限ったことではなく、アメリカでも展開しています。だからオバリーは別に「日本のイルカだけ」を保護したいわけではありません。アメリカでも囚われたイルカを解放していますし、イルカを兵器として飼い慣らそうとした海軍を相手に裁判を起こし勝訴しています。そういう男のドキュメンタリーなのです。

ところがなぜかメディアでは「日本の捕鯨を批判している映画」という風に見せています。

こちらでも書いたように日本人は捕鯨に関して大きな誤解をさせられているように感じます。何が問題なのか正しく把握しない限り、この問題の解決は見えてこないでしょう。

アメリカの人たちが何を思っているのか知らずに、国内だけで「アメリカ人は捕鯨の価値を知らない」といくら言っても何も変わりません。アメリカの主張を知った上で、反論すべきところは反論しましょう。それができないのなら日本人は、井の中の蛙です。

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